銀行連携なしの支出トラッカー
Mintは2024年3月に終了し、多くの人が使っている間は考えもしなかったことに気づかされました。Mintを使うために、自分の口座内のすべての取引に対する継続的な読み取りアクセスを、ある会社に渡し続けていたのです。
後継となるサービスの多くは同じ仕組みで動いています。アプリを開くと最初の画面で、アグリゲーターを通じて銀行にログインするよう求められます。ログインを避けたい場合、たいていの結末はアプリを閉じて、また何も使わない状態に戻ることです。
この記事はもうひとつのカテゴリー、つまり自分で数字を入力する支出トラッカーについてです。便利さでは劣りますが、プライバシーの面で優れており、そのほうが効果があるという理にかなった主張もあります。
銀行連携が実際に意味すること
アプリが銀行との連携を提案してくるとき、そのアプリが銀行と直接やり取りしていることはまずありません。間に入るのはアグリゲーターで、そのアグリゲーターが継続的に取引履歴を読み取れる接続を保持します。
この仕組みはごく一般的で広く使われており、たいていは問題ありません。しかし同時に、自分の完全な支出履歴が、自分では選んでいない、名前すら知らないかもしれない会社に置かれ、その会社の将来は自分には予測できないということでもあります。Mintの終了は、こうした仕組みが永続的ではないことを思い出させる出来事でした。
もうひとつ、あまり語られない問題があります。アグリゲーターは現金を見ることができません。何かを紙幣で支払えば、自動記録には穴が空き、しかも穴があることを教えてくれる方法もありません。
なぜ手入力は思っている以上にうまくいくのか
自分で入力することに対するわかりやすい反論は「手間がかかる」というものです。あまり知られていない反論は、その手間こそが価値の大部分を占めているというものです。
自動記録は、すでに起きたことのレポートを見せてくれます。レポートをあとから読み、一瞬「よくわかった」気になり、そして何も変わりません。数字を目にする頃には、その決断はもう数週間前のものだからです。
手入力は、注意を決断の瞬間そのものに置きます。その金額を確定させるまさにその瞬間に意識します。両方を経験した人たちが繰り返し語ることは同じで、手入力のときは慎重になり、自動記録のときはより優れたデータがあるにもかかわらず慎重にはならなかったというものです。
これが本当のトレードオフです。自動記録は記録の完全性を最適化します。手入力は支出の瞬間の意識を最適化します。実際に行動を変えるのはそのうちの一方だけです。
「使わなかったお金」を記録するバージョン
ここで知っておく価値のあるバリエーションがあります。このバリエーションは、どんな銀行のデータ連携でも原理的に実現できないからです。
取引をもとにしたツールは、自動でも手動でも、出ていくお金しか記録できません。何かをやめようと決めた瞬間には、取引がまったく発生しません。データにも行が現れず、取り込むものも分類するものも何もありません。このカテゴリー全体にとって、その決断は存在しないのと同じです。
しかし、そうした決断には金額があり、月末にお金が残っている理由はまさにそこにあります。そこで、逆のことを記録するトラッカーを使うことができます。使うつもりだった金額、実際に使った金額、そしてその差額を積み上げていくものです。
この記録は手入力でしか実現できません。「あと少しで何かを買うところだった」ことを知っているデータソースは、世界のどこにも存在しないからです。だからこの場面では、自分で入力することが唯一の方法になります。
プライバシー重視の支出トラッカーで確認すべきこと
- 銀行連携がそもそも存在しないこと。 デフォルトでオフになっている機能は、信頼しなければならない設定にすぎません。連携の仕組み自体が存在しないアプリなら、誰が何をしても口座を読み取ることはできません。
- アカウント登録が不要なこと。 サインアップがなければパスワードもなく、保存されるIDもなく、他社の情報漏洩に巻き込まれるものも何もありません。
- 目に見える形でローカルに保存されること。 端末上に、自分のスマホのバックアップに含まれる形で保存されること。
- 書き出し機能。 データをCSVとして取り出せないなら、実質そのデータを自分のものにしているとは言えません。書き出し機能は、Mintのようにアプリが消えたときの保険にもなります。
- 誠実なプライバシーページ。 アプリが何をするかを説明しているページを探しましょう。「何も収集しません」は書くのは簡単で、時間が経つと事実と合わなくなりやすいものです。アプリが行いうるリクエストをひとつずつ名指ししているページは、最近きちんと確認されたことがうかがえます。
- アナリティクスSDKがないこと。 ほかの点ではプライベートに見えるアプリでも、サードパーティ製の解析ライブラリを組み込んでいることがよくあり、つまり開く画面ごとに他社への通信が発生するということです。
正直なデメリット
手入力には本物のコストがあり、乗り換える前に知っておくべきです。
記録し忘れることが出てきます。すべての買い物をずっと記録し続けられる人はいませんし、支出の完全で監査可能な記録が目的なら、銀行データのほうが必ず勝ちます。自動分類、残高の推移、純資産といったものも失われ、人によってはこうした機能こそが本来の目的だったりします。
そして、ローカル保存のみということは、スマホのバックアップがきちんと動いていない限り、端末を失うことがデータを失うことに直結します。ローカル保存は、履歴を他人のサーバーに置かないことと引き換えの、本物のトレードオフです。
すべてのお金の完全な全体像が欲しいなら、銀行を連携しましょう。使い方そのものを変えたいなら、そして取引履歴を第三者に渡したくないなら、手入力のほうが適した道具です。
私たちが作ったもの
Keep the Diffは後者、つまり使わなかったお金のための手入力トラッカーです。銀行連携もアカウント登録も、アナリティクスも広告もありません。記録したものはすべて端末上に保存され、プレミアムでは記録をまとめてCSVとして書き出せます。
ネットワークを使うのは2つの場合だけで、どちらも自分で選んで行う操作です。MacやPCでプレミアムのロックを解除するとき(短いコードとレシート番号だけを送り、書き留めた内容は何も送りません)と、自分のデバイス間でのプレミアム同期(端末上で封をしたコピーを、こちらに届かない鍵で送ります)です。あえてここまで具体的に書くのは、以前「通信は一切行いません」とだけ言い切ってしまい、その言葉が事実と合わなくなったことがあるからです。詳しくは英語版の記事こちらにあり、プライバシーポリシーは1ページにまとめています。
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